破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 アーシェリアスはページに指を挟んでおき、表紙を確認する。

「リンカの献立集」

(カタカナと漢字を使ってる。ああ、やっぱり女将さんとコスタさんのおばあ様、リンカさんは転生者だ)

 神様に転生をお願いしたのか。

 たまたま転生できたのか。

 今度神様に会ったら尋ねてみようと思いながら、最初のページを捲る。

「レディアーシェリアスは読めるのですかな、その文字を」

 宰相の声にアーシェリアスが顔を上げると、宰相だけでなく女王も驚きに表情を染め、アーシェリアスを凝視していた。

(しまった! ついに声に出して読んでしまったけど、このままじゃ説明しづらい展開になっちゃう)

 ザックは信じてくれたけれど、前世は異世界の人間で、なんて話をするには勇気がいる。

 せめてファレ乙の世界に魔法があれば、不可思議なことも受け入れてくれる可能性もあっただろう。

 だが、残念ながらそんな世界ではない。

「これはどこの国のものだ」

 宰相に問われ、アーシェリアスはレシピ本に視線を落とす。

「それは……」

 言い淀むアーシェリアスを助けようと、ザックが口を開こうとした刹那。

「詮索はおよしなさい」

 女王が宰相を窘めて止めた。
< 160 / 232 >

この作品をシェア

pagetop