破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 ザックにとって意外な行動だったのだろう。

 女王を見るザックはひどく驚いたように両眉を上げていた。

「今大事なのは料理の再現よ。あなたがすべきことはレディアーシェリアスから必要な食材を聞き、手配すること」

「承知しました」

 宰相が謹んで頭を下げる。

 その様子を横目で一瞥してから、女王はアーシェリアスを真っ直ぐに見た。

「レディアーシェリアス。材料はこちらで揃えます。準備が整い次第、作ってもらえるかしら」

「はい、心をこめて作らせていただきます」

「頼みます。それと、役目を終えるまでは連絡の取りやすいようここに滞在なさい」

 女王の申し出にザックが確認する。

「アーシェを城にですか?」

「ええ、部屋を用意させます。何か不都合でも?」

 冷たい物言いに、アーシェリアスはハラハラしながら成り行きを見守る。

「……いえ。では、仲間の滞在許可もいただけますか」

「好きになさい。レディアーシェリアスに世話になる間は歓迎します。例え、招かれざる相手でも」

 最後はザックに向けての嫌味だろう。

 けれど、慣れているのかザックは眉ひとつ動かさずに「ありがとうございます」と一礼した。

 その姿に、アーシェリアスの胸が切なく痛む。

 本当なら慣れるべきことではない、と。
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