破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
(それなら、ザックが住むのは亡くなったシャーリーン王妃様と過ごした屋敷、なのかな)

 高級なステーキにナイフを入れたところで、エヴァンが「ああ、そういえば」と眉を上げた。

「アルバートが騎士宿舎にいたぞ」

「えっ」

 アーシェリアスは思わず嫌そうな声を出してしまう。

「てことは、婚約者のお騒がせぶりっ子も来てるのかぁ」

 盗賊に囚われ、危機に陥った原因であるミアを思い出したノアは、アーシェリアスよりも露骨に不快さを表した。

 そうなのだ。

 アルバートがいるということは、ミアも王都にいるはず。

 城にいればミアと会うことはそうそうないだろうが、アーシェリアスは知っている。

 人生とは、何が起こるかわからないことを。

 死期ではないのにうっかり死ぬこともあれば、ゲームの世界に転生だってしてしまうのだ。

(とにかく、今私にできるのは、破滅フラグを刺激しないこと)

 パクリと柔らかなチキンを口に運んだアーシェリアスは、どうかあの本に幻の料理について書かれていますようにと願う。

 食べて幸せになり、破滅フラグをへし折るために。


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