破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】

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「それじゃあお休みなさい、ザック」

「ああ、また明日」

 食事を終え、団欒の時間が過ぎると、ザックはアーシェリアスたちを見送った。

 広い城内で迷わぬよう、客間へ送るエヴァンと会話を弾ませるノア。

 ふたりの掛け合いに微笑むアーシェリアスが黒髪を靡かせ、廊下の角へと消える。

(国外追放、か)

 先ほど、エヴァンがアルバートの名を口にした際、アーシェリアスの身体が一瞬強張ったのが見て取れた。

(警戒してるんだろうな)

 以前、ルーヴ家の庭で聞いたアーシェリアスが辿ったかもしれないひとつの運命。

 万が一の場合は自分の力でできる限り守るつもりだ。

 だが、できることならさっさと払拭してしまえるのが一番いいのだろう。

(アルバートとミアが起爆剤なのか)

 廊下に立ち尽くしたままザックは黙考する。

 ザックの見立てでは怪しいのはミアだ。

 馬車について知らなかったような素振りをしていたが、本当にそうなのか。

 アーシェリアスの友人を疑いたくはないが、カリドで見たミアの態度や口振りをザックは覚えている。

(アーシェを傷つけるかもしれないなら、徹底的に調べておいた方がいいな)

「……そういえば、御者役の男が掴まっていないと話していたか」

 ついにはぶつぶつと声を零し始めた時だ。
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