破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
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ザックの部屋から自分用に用意された客間に戻ったアーシェリアスは、部屋でじっとしていられず、近くにいた衛兵に頼んで城の庭園に散歩に出ていた。
リンカの料理本を見つけられたことで気持ちが高ぶっているのもあるが、転生者の可能性がある興奮も要因だろう。
加えて、アルバートとミアが王都入りしたという情報。
こちらについては不安が勝って落ち着かず、一日でテンションが上がったり下がったりと情緒がブンブン振り回されている。
「はぁ……」
ナイトランプに照らされる夜の噴水を眺め、思わず溜め息が漏れる。
「悩み事かしら?」
突然話しかけられ、アーシェリアスの肩が跳ねた。
声のする方を見ると、謁見の間で堂々たるオーラを放っていた女王がそこにいた。
「へ、陛下!」
ベンチに腰掛けていたアーシェリアスは、慌てて立ち上がり会釈する。
「いいのよ、座っていてちょうだい」
「で、でも」
ファーレンの女王を前に、座っているなど礼儀に欠ける行いはできない。
そう思い、アーシェリアスは戸惑う。
その様子に、女王は護衛の兵を見た。
「あなたたちは下がってなさい」
指示し離れた場所へ下がらせると、女王はベンチに腰掛ける。
「これで今はプライベートの時間よ。女王だからと気を使うことはないわ」
笑みひとつ浮かべずに話し、女王は隣に座るようにと手のひらで優雅にベンチを指した。