破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】

💎思い出の肉じゃがと、後悔の琥珀糖

 朝陽が昇り、広いベッドで目覚めたアーシェリアスはむくりと起き上がると大きくあくびをした。

(うーん……眠い……)

 色々あったためか、昨夜はなかなか寝付けなかった。

 もうひと眠りしたいところだが、今日は肉じゃがと一緒に出すメニューを考えて食材を用意するつもりなのだ。

(何がいいかなぁ。和食で揃えたいけど……とりあえず馬車に積んである食材を確認してみよう)

 シーゾーが今まで出してくれた調味料も持ってきた方が良さそうだと考えていると、背後から「モフー!」という挨拶が聞こえた。

「おはよう、シーゾー」

 と言いながらも、再びベッドに寝転ぶ。

 モフモフのシーゾーを間近に見るとその手には。

「あ、ブルーハワイだ」

 南の島の海を彷彿とさせる、かき氷のシロップがあった。

「モフ」

「いつもありがとう、シーゾー。シロップかぁ。何に使おうかな」

 飲み物に混ぜるのは定番として、スムージーのアクセントに使うのもいいかもしれない。

(ゼリーはどうかな。細かく砕いて宝石を散りばめたみたいに──)

 そこまで考えて、アーシェリアスはぴたりと止まった。

「宝石に似た、柔らかいキャンディーって、もしかして」

 アーシェリアスの脳裏に浮かぶひとつのお菓子。

(もしかしたら違うかもしれないけど……)

 昨夜、知っているかと尋ねた女王の表情を思い出す。

 力ない様子からすると、そのお菓子に何かしらの思い出があるのは違いない。

 おこがましい考えかもしれないが、その憂いを晴らす手伝いができるなら。

「作ってみよう!」

「モフ?」

「シーゾー、朝ご飯を食べたら買い物に出かけましょ!」

「モフモフー!」

 粉寒天に上白糖。

 必要な材料はファーレンでも手に入る。

 予想が当たり、笑顔になってもらえるよう祈りながら、アーシェリアスはベッドから飛び起きた。


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