破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
「ザック? え、兄上ということは」

 瞬きながらアーシェリアスは美しい男を見やる。

「初めまして薔薇の姫君。俺はザックの兄、アーサーだ」

「だっ、第一王子殿下!」

 アーシェリアスが慌てふためき頭を下げると、ノアもかしこまってお辞儀した。

「アーシェリアス・ルーヴと申します!」

「ノア・キャンベルです、殿下」

 アーサーがフフッと微笑み「顔を上げて」と願う。

「ああ、やはり惜しいな、レディアーシェリアス。できれば俺が君を摘んで、毎日愛でてあげたかった」

「兄上」

 咎めるようなザックの固い声に、アーサーはクスクスと笑った。

「すまない。お前の大事な薔薇に手は出さないさ」

 アーサーの言葉にアーシェリアスが頬を赤く染めたのを見たノアが、ほんのりと不機嫌になる。

「ゆっくり話したいところだが、可愛い弟に頼まれて出かけないとならない。落ち着いたら、皆でティータイムを楽しもう」

 それじゃあねと、手を振って広場へと向かうアーサー。

 ザックが短く溜め息を吐いた。

「悪い。女を口説くのが趣味みたいな人なんだ……」

「そうみたいだね。王子様じゃなかったらボク、ウザイって言ってたよ」

 ノアが頬を膨らませる隣で、アーシェリアスは空笑う。

 以前、不安だと零していた理由はこれか、と。
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