破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 アーシェリアスの作った食事は侍女により、女王専用のサロンに運ばれた。

「アーシェ」

 サロンの前でザックに会ったアーシェリアスは、笑顔を見せる。

「ザック! 用事は済んだの?」

「ああ、兄上のおかげでなんとか。あとは王都に到着するのを待つだけだ」

 何が?と問いかけるよりも早く、宰相が「レディアーシェリアス」と入室を促した。

「アイザック殿下もどうぞお入りください」

「感謝する」

 昨日、今日の食事にザックが同席することを願い出た時、正直ダメ元だった。

 不仲故に女王から許しは出ないだろうと思っていたのだ。

 しかし、予想に反してすんなりと許可され、ザックと共に拍子抜けしたのをアーシェリアスは思い出す。

(肉じゃがが陛下の好物というだけでなく、ザックのお母様であるシャーリーン王妃の作ったものだから?)

 女王の考えはわからないが、何かいい進展があればいいなと願いつつ、アーシェリアスはザックと共に女王の前に並び立つ。

「レディアーシェリアス。この度はご苦労様でした」

「このような機会をいただきありがとうございます。できるだけレシピに近い物を目指して作りました」

「それは楽しみだわ。……ところでアイザック」

「はい」

 また何か嫌味でも言われてしまうのではと、アーシェリアスはハラハラしながら見守る。

「あなた、シャーリーンの手料理を食べた記憶は?」

「ありません。母が変わった料理を作れることも知りませんでした」

「そう。わかりました」

 納得し、女王はザックから静かに目を逸らした。
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