破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
(ザック……)
アーシェリアスの瞳に涙が滲む。
幼くして母を亡くし、王子として生きることに苦しんでいたザックの気持ちを想像して胸が詰まった。
(陛下は、本当はお優しい人なのね……。あ、そうだ)
まだ食事の途中ではあるが、アーシェリアスはサプライズの品を女王に差し出した。
「あの、陛下。これを受け取っていただけますか?」
「これは……?」
「陛下の仰っていたものかはわからないんですけど、どうぞ開けてみてください」
勧めると、女王はリボンを解いて四角い箱の蓋を持ち上げる。
「宝石のお菓子……!」
箱の中に並ぶのは、鉱石風にカットされた琥珀糖だ。
結晶化し、すりガラスのごとくやや半透明な見た目は、宝石と見紛うほど美しい。
「これは琥珀糖というお菓子なんですよ」
「名は知らなかったの。シャーリーンはただ、中が柔らかい食べられる宝石ですとだけ……」
どうやらこちらもシャーリーン王妃が絡んでいたらしい。
和菓子である琥珀糖を、シャーリーンはリンカから伝授されたのだろうか。
ともかく、正解だったことに安堵していると、女王は唇を震わせた。
「……ああ、ごめんなさい……せっかく作ってもらったけれど……食べられない。食べる資格はないの」
「なぜ、そう思われるのですか?」
「私は、この美しい宝石を、シャーリーンの厚意を、いらないと払いのけてしまったから」
見ていられないとばかりに手で顔を覆った女王が、涙ながらにぽつりぽつりと語ったのは、長年募らせていた彼女の葛藤とシャーリーンへの懺悔だ。
アーシェリアスの瞳に涙が滲む。
幼くして母を亡くし、王子として生きることに苦しんでいたザックの気持ちを想像して胸が詰まった。
(陛下は、本当はお優しい人なのね……。あ、そうだ)
まだ食事の途中ではあるが、アーシェリアスはサプライズの品を女王に差し出した。
「あの、陛下。これを受け取っていただけますか?」
「これは……?」
「陛下の仰っていたものかはわからないんですけど、どうぞ開けてみてください」
勧めると、女王はリボンを解いて四角い箱の蓋を持ち上げる。
「宝石のお菓子……!」
箱の中に並ぶのは、鉱石風にカットされた琥珀糖だ。
結晶化し、すりガラスのごとくやや半透明な見た目は、宝石と見紛うほど美しい。
「これは琥珀糖というお菓子なんですよ」
「名は知らなかったの。シャーリーンはただ、中が柔らかい食べられる宝石ですとだけ……」
どうやらこちらもシャーリーン王妃が絡んでいたらしい。
和菓子である琥珀糖を、シャーリーンはリンカから伝授されたのだろうか。
ともかく、正解だったことに安堵していると、女王は唇を震わせた。
「……ああ、ごめんなさい……せっかく作ってもらったけれど……食べられない。食べる資格はないの」
「なぜ、そう思われるのですか?」
「私は、この美しい宝石を、シャーリーンの厚意を、いらないと払いのけてしまったから」
見ていられないとばかりに手で顔を覆った女王が、涙ながらにぽつりぽつりと語ったのは、長年募らせていた彼女の葛藤とシャーリーンへの懺悔だ。