破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
「王……当時は王子ですね。王子は身分を隠し、リンカさんの家に数日やっかいになっていました。そこで、おふたりは恋に落ちた」
だが、身分違いの恋である故、王子は想いを打ち明けることなく城に戻った。
その後、リンカの元で世話になり続けるわけにはいかないと、シャーリーンは侍女として働き出し、ミランダの婚約を機に王と再会したのだ。
女王は言葉をつまらせながらも語る。
「私は何も……知らなかった。シャーリーンは何も話してくれなかった。信頼してたのよ。なのに、裏切った」
だから、ふたりの関係に亀裂が入ったのだとアーシェリアスは理解した。
そして……。
「王はシャーリーンとの日々を優先して、私のことは見なくなった。でも、シャーリーンは自分の立場も、私の苦しみも理解していた。だから適度に距離を取って接し続けてくれていた。私が冷たく当たっても、変わらない笑顔で」
心から嫌いになれなかったことも。
「シャーリーンから宝石のお菓子を差し入れられたのは、彼女が亡くなるひと月前だった」
女王は、シャーリーンが病を患っているのは知っていた。
だから、具合が良くない中お菓子を作ってくれたのもわかっていたのだ。
けれど、顔を見ると素直になれず……。
『ミランダ様、良かったらこれを、受け取ってください』
『それは何?』
『食べられる宝石です。固そうに見えて、噛むと柔らかいんですよ』
『……いらないわ』
『とても綺麗なんですよ。ミランダ様の美しさには敵わないけれど』
『いらないと言ってるの!』
包みを持つやせ細ったシャーリーンの手を、払いのけてしまった。
地面に散らばったお菓子は、確かに宝石のように美しく、しかし自分の心の醜さが際立って見えた。
だから、謝りもせずに背を向けて去ってしまったのだ。
だが、身分違いの恋である故、王子は想いを打ち明けることなく城に戻った。
その後、リンカの元で世話になり続けるわけにはいかないと、シャーリーンは侍女として働き出し、ミランダの婚約を機に王と再会したのだ。
女王は言葉をつまらせながらも語る。
「私は何も……知らなかった。シャーリーンは何も話してくれなかった。信頼してたのよ。なのに、裏切った」
だから、ふたりの関係に亀裂が入ったのだとアーシェリアスは理解した。
そして……。
「王はシャーリーンとの日々を優先して、私のことは見なくなった。でも、シャーリーンは自分の立場も、私の苦しみも理解していた。だから適度に距離を取って接し続けてくれていた。私が冷たく当たっても、変わらない笑顔で」
心から嫌いになれなかったことも。
「シャーリーンから宝石のお菓子を差し入れられたのは、彼女が亡くなるひと月前だった」
女王は、シャーリーンが病を患っているのは知っていた。
だから、具合が良くない中お菓子を作ってくれたのもわかっていたのだ。
けれど、顔を見ると素直になれず……。
『ミランダ様、良かったらこれを、受け取ってください』
『それは何?』
『食べられる宝石です。固そうに見えて、噛むと柔らかいんですよ』
『……いらないわ』
『とても綺麗なんですよ。ミランダ様の美しさには敵わないけれど』
『いらないと言ってるの!』
包みを持つやせ細ったシャーリーンの手を、払いのけてしまった。
地面に散らばったお菓子は、確かに宝石のように美しく、しかし自分の心の醜さが際立って見えた。
だから、謝りもせずに背を向けて去ってしまったのだ。