破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】

☠破滅エンドがあらわれた!

 一夜明け、逢魔が時のファーレン城に、楽団の奏でる優雅な演奏が流れ始めた。

 今夜は、宮廷舞踏会を兼ねた晩餐会が開かれているのだ。

 女王の挨拶から始まる乾杯の儀式のあと、大広間は賑やかな雰囲気に包まれた。

 歓談に興じて笑みを零す上流階級の紳士淑女。

 華やかなドレスの裾を揺らしてパートナーと踊る令嬢たち。

 そんな賑やかな会場の片隅に、アーシェリアスは目立たぬようひっそりと立っていた。

 なぜ、アーシェリアスが晩餐会に出席しているのか。

 それは昨日、食事を完食した女王より賜った礼だからだ。

『レディアーシェリアス、お礼にもならないけれど、明日の晩餐会に招待させて』

 アーシェリアスが作った肉じゃがと琥珀糖により、積年の後悔が溶け始めた女王。

 本を貸すだけでは足りないと、アーシェリアスをもてなすことにしたのだ。

 もちろん、ザックやノア、エヴァンも招待を受けている。

 しかし、皆それぞれに忙しいようで、晩餐会の時間に現地集合となっていた。

(みんなどこにいるのかな)

 アーシェリアスは、自身の纏うドレスの胸元を飾るコサージュに触れる。

 白地にエレガントな花柄が描かれたこのドレスは、女王がアーシェリアスにと急遽設えさせたものだ。

 ノアにも用意してくれると聞いていたが、きっと可愛らしいドレスに身を包んでいることだろう。

 だが、そのノアもなかなか広間に現れない。

 何の用事であるかは本人が『まだ内緒!』とウインクして教えてくれなかったので不明だ。
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