破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】

「ノア……ありがとう」

　そっと胸元を押さえるアーシェリアスに、ノアは困ったように微笑んだ。

「それは、どういう意味のありがとう？」

　尋ねるノアの声は遠慮がちだ。

　きっとノアは、その意味の予想がついている。

　それでも有耶無耶にしたくないと、アーシェリアスはノアに真っ直ぐな視線を向けた。

「ごめんね、ノア。私、ザックが好きなの」

「うん……知ってる。今のボクじゃザックには勝てないことも、わかってる」

　俯いてしまったノアに、アーシェリアスはどう声をかけるべきか迷っていたのだが。

「だから……騎士として成長したら奪う！」

　顔を上げ、眼差しに力強さを宿したノアに、アーシェリアスは「んぇっ⁉」と素っ頓狂な声を漏らした。

　完全に諦める流れだと思っていたのだ。

（乙女ゲーム的には、潔く引く感じじゃないの⁉）

　ノアは攻略キャラじゃないからなのか、莉亜がやってきたゲームがたまたまそういったシナリオが多かったのか。

　動揺しているアーシェリアスにかまわず、ノアはマイペースにニコニコと微笑む。

「王子様のザックの方が身分も上だけど、ボクなら絶対ザックよりいい男になれるはずなんだよね。魔物から守る能力はボクの方が優れてるし、力もあるし？　そこに騎士の技術が加われば最強じゃない？」

　確かに、それはかなり優秀な人材となるだろうと、戸惑いながらもアーシェリアスは納得する。

「だから、ザックよりもボクがいいって言ってもらえるように頑張るから、よろしくね」

　可愛らしく首を傾けて宣言するノアはまるで小悪魔だ。