破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 太陽の陽を浴びて煌めく金の髪と、透明な海を思わせるエメラルドグリーンの瞳。

 口に運ぶのはアーシェリアスお手製のおやきだ。

「なんだ? 食べるか?」

 アーシェリアスの視線に気付いたザックが、目鼻立ちの整った顔を僅かに傾ける。

「ううん、大丈夫」

 遠慮すると、ザックは「そうか」と淡々と言って、またおやきを口にした。


 ザックと出会ったのは、アーシェリアスがまだ十歳の時だ。

 今では『元』がつく婚約者のアルバートから逃げた先に腹を空かせたザックを見つけ、アーシェリアスがおやきを手渡したのだ。

 言葉を交わしたのはおやきを食べている間だけ。

 だが、その後ふたりは互いを忘れることなく再会を果たし、こうして共に『幻の料理』を求め、旅をしている。

(旅に出た時は、まさかザックを好きになるなんて予想もしてなかったな)

 むしろ、乙女ゲームの最推しキャラである兄、レオナルド以外を好きになれそうにもなかった。

 そう、ここは『ファーレンの乙女~永遠に続く誓い~』という乙女ゲームの世界。
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