破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
「私も、ザックだから幸せだと感じられる。だけどいいの? ここにいたら、自由にはなれないのに」

 旅の最中は自由であることを望んでいたはずだ。

 城が嫌いで、王子であることに苦痛も感じていたはずのザック。

 最近では、アーサーの束ねる騎士団の運営を補佐し、王子としての責務を全うしている。

 ミステリアス王子という異名も過去のものになりつつあるほどに、表舞台に立つようにもなっていた。

「もう窮屈には感じてない」

 アーシェリアスの料理が女王の心を溶かし、ザックとの関係を変えてくれたから。

 ザックが晴れ晴れとした顔でアーシェリアスを見つめる。

「で、アーシェは覚悟できてるのか?」

「何の?」

「俺に自由を奪われる覚悟」

 そう言って、ザックはアーシェの左手の薬指に触れた。

 そこにはまだ何もないけれど、三日後にはザックの瞳と同じ色の宝石が埋められた指輪が飾られる。

「幸せに縛られて失う自由なら、全然窮屈じゃないわ」

 告げたアーシェリアスの笑みは確かに幸福に満ちていて、ザックは愛しさが溢れるままに、可憐な唇に口づけた。

「愛してる」

「私も、愛してるわ」

言葉を交わして、また唇を合わせて。

(お母さん、お母様。私、今とても幸せよ)

 甘いお菓子のようなハッピーエンドをふたりは迎えたのだった。


 そんな幸せ溢れるアーシェリアスの料理が、幻の料理として後世に名を遺すのはまた別のお話。




ー FIN ー
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