破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 ある秋の虹が出た日には、クレーンゲームで狙ったものを取れるまでかえれません!を決行。

「神様、一発で取れるなんて何か力使いました?」

「まさかぁ。たまたまだよー。で、そなたは取れたの?」

「ぐ……そろそろ五千円ですけど取れなくて。お年玉下ろしてきたけどピンチの予感です。乙女ゲームでイケメン落とすのは得意なんですけどね。攻略サイトいらずでクリアです」

「おとめげーむ?」

「ふふ、神様は知らないですよね。あっ、もうすぐ新作が出るんですよ! 『ファーレンの乙女』っていうんですけど、ずっと楽しみしてたので早くプレイしたくて」

 微笑みながらウズウズしている理香を見て、ハクジュは目を細める。

「……我はそなたがそうして笑っていると、なんだか嬉しくなる」

「私もですよ。神様が楽しそうだと嬉しいです。私、神様に会えてよかったって思ってるんですよ」

「我も……うん、我もそうだ。そなたに会えてよかったと思うし──」

 これから先もずっと一緒にいたいと思う。

 そう言いかけて、口をつぐんだ。

 理香の寿命はもう三月ほどしかない。

 共にいることは叶わないのだ。

「寂しい、な」

「寂しい?」

 里香が首を捻り、ハクジュも頭を傾げた。

「……あれ? 我、口に出してた?」

「思いっきり」

「あはは、そっか。うん、気にしないでいいよ」

 理香といると心が落ち着かない。

 笑顔を見れば温かくうずくし、憂いを帯びた横顔は苦しくなった。
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