破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 基本的に神々が神力を使うことに制限はない。

 しかし、天命に背くような力を使う場合は代償を払う必要があるのだ。

 自らの大切なものと引き換えにするという代償を。

 そしてハクジュにとって今、一番大切なものは。

「は……っ……か……み、さま」

 終わりに向かい、苦しむ里香が朦朧としながらハクジュの姿を探す。

 ハクジュは白く細い里香の手を両手でそっと包んだ。

「大丈夫、我が新しい世界に送ってあげる」

 だから、安心して次の人生に旅立ってほしい。

「かみ、さ、ま……」

「大切なそなたの新しい人生に、幸あらんことを」

「あ……り、が……──」

 握っていた里香の手から力が抜け、鼓動が止まる。

 すると、ハクジュの神力が柔らかな光となり、里香の体を包み込んだ。

 キラキラした里香の魂が体から抜けて、神力に守られながら別の世界へと旅立った。

 その、刹那。


 はらはらと、ハクジュの双眸から頬を伝い零れ落ちたものは。


「っ……」


 ハクジュが生まれて初めて流す涙だ。


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