破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 地図で見た通り、ゲレータ地区は迷路のように入り組んでいた。

 住宅街なので人通りは少なく、共に歩いていればはぐれることはなさそうだったが、アーシェリアスとザックは目的の家が見つかるまで手を繋いでいた。

 しかし、それらしき家を前にすると、どちらからともなくその手をそっと離す。

 名残惜しい気持ちを隠し、ふたりは煙突を備えた木造の一軒家を見上げた。

「ここがコスタさんの家?」

「教えてもらった外観と酷似しているし、間違いないんじゃないか?」

 数分前、たまたま玄関の掃除していた女性に尋ねてみたところ、地図を見てこの場所だと教えてくれた。

 また、白い外壁と水色の屋根、玄関先のポーチにたくさんの花が植えられている家だとも。

 ここで幻の料理について何か有益な情報が得られるだろうか。

 期待を胸に、アーシェリアスは黒い鉄製のドアノッカーを叩く。

「ごめんください」

 ドキドキしながら反応を待つと、ややあって屋内からくぐもった男性の声が返ってきた。
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