破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 通されたのは暖炉のある部屋だ。

 広くはないが、木材でできた温かみのある家具に囲まれ、アットホームな雰囲気に包まれている。

 若草色のソファーに腰を下ろし、キッチンへ向かったコスタを待つ。

 暫くすると、彼はトレーにティーセットを乗せて戻って来た。

 カップに注がれる液体は黒いが、コーヒーよりも透きとおっている。

「これ、ダークティーですか?」

「ええ、すごいですね。よくおわかりで」

 ダークティーとはプーアル茶のことで、日本ではどこでも購入できる茶葉だ。

 しかし、ファ乙の世界では貴重なもので、海を遥かに超えた大陸から輸入される。

 その数は少なく、なかなか入手が難しい。

 ファーレンではあまり出回っておらず、アーシェリアスも人生で口にしたのは片手で数えられる程度だ。

「これは祖母が気に入っていたお茶です。毎年、祖母の命日に間に合うよう行商人に頼んで手に入れてるんですよ」

「貴重なお茶をいただいてもいいんですか?」

「ええ、どうぞ。わざわざ祖母のことで訪ねてもらったんです。ぜひ」

「では、いただきます」

 ひと口飲むと、芳醇でほんのりとした甘みが広がる。
< 28 / 232 >

この作品をシェア

pagetop