破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
「それで、アーシェ。まずはどこに行くの?」

 厩舎に着き馬車を降りると、再びノアに尋ねられる。

「そうね。宿もいいけど、私は早くエスディオの名物料理を食べに行きたいなぁ」

 隣国モルンロート王国とファーレン王国を隔てる山脈に近いエスディオは、植物や果物、きのこに川魚などの山の幸で有名だ。

「きのこたっぷりグラタンも食べたいし、木苺のタルトも捨てがたいわよね……」

 宙を見つめ、前の宿場町の酒場で聞いたエスディオのオススメ料理に思いを馳せるアーシェ。

「帰ってこい、アーシェ」

 料理のことになると若干意識が出張しがちのアーシェに、呆れた様子でザックが声をかける。

「いいや、マンゴー確保だ」

「エヴァン、マンゴーは後だ」

「なぜですかアイザック様!」

 ザックの護衛である王立騎士のエヴァンは、くわっと目を見開いてザックに抗議の目を向けた。

 好物のマンゴーを一日にひとつは食べないと気が済まない性分のエヴァンにとって、マンゴーのストックが切れることは死活問題なのだ。

「宿の部屋を確保できないと寝る場所がない。あと、何度も言うがザックと呼べ。それから声がでかい」

「俺もマンゴーを確保できないと困るんです!」

「じゃあ別行動してひとりで買いに行けばいい」

 さらりと放たれたザックの言葉に、エヴァンは「それでは泊まる宿がわからないですよ」と口にしたところで、優先順位が宿であることを悟る。

「くっ……! では、宿が決まり次第、俺は市場に走ります」

「そうしてくれ。ということで、宿に行くぞアーシェ」

「ええ、わかったわ」

「やったー!」

 喜ぶノアに同調するようにシーゾーが「モフー!」と宙で跳ねまわるのを、アーシェリアスはほのぼのとした気持ちで見ていた。


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