破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 驚いたアーシェリアスは、勢いよくザックを突き飛ばす。

「は、はい⁉」

「お邪魔しまーす……って、何してんの」

 扉を開けたノアは、無表情で床に転がるザックを見て眉を寄せた。

 そうして、顔を赤くしたアーシェリアスを見てから、再度ザックへと視線を移動させる。

「何? 怪しいなぁ」

 察したのか、疑いの眼差しを向けるノアに、アーシェリアスは顔を赤らめたままにっこりと笑った。

「て、手押し相撲してたの!」

 苦し紛れの嘘を口にして、もっと他にあっただろうと心の内で突っ込む。

「手押しズモーって何?」

 眉を顰めたままのノアに問われ、アーシェリアスは貼り付けた笑みを崩さないように答える。

「異国の遊びよ。今度ノアちゃんも一緒にやりましょ!」

 どこの国のだと聞かれたら困るが、とりあえずそう説明するとノアは「ふーん?」とだけ返事をした。

「いいけどさ、こんな夜更けにやるのはどうかと思うよ」

「そ、そうよね。ごめんね。うるさくて起こしちゃった?」

「そうじゃないよ、ザックの部屋を訪ねたらいなかったから、もしかしてアーシェのところにいるんじゃないかと思って来たんだ。そうしたらやっぱりいるし」

 腕を組んだノアが唇を尖らせる。

「まったく、油断も隙もない」

 溜め息を吐き、ザックの後ろ襟をむんずと掴んだ。

「帰るよ、ザック! じゃ、おやすみアーシェ」

「う、うん。おやすみ~」

 どことなく不機嫌なノア。

 抵抗することなく引き摺られていくザック。

 ふたりを見送り手を振ると、パタンと扉が閉まる。
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