破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】

🍅トマトスープ大作戦

 ──ピチャン。

 水滴が弾ける音がした。

「……ぅ……」

 身体がぶるりと寒さに震え、アーシェリアスの意識がゆっくりと覚醒を始める。

(あれ……私……)

 ぼんやりとする意識のまま、双眸を瞬かせフラフラと瞳を動かすと、視界によく知る者の顔が入り込んだ。

「アーシェ、大丈夫か?」

「……ザック?」

 心配そうにアーシェリアスの顔を覗き込むザックが、安堵の息を吐く。

「目を覚まして良かった。あの煙は意識を失わせるだけらしいな」

「煙……そうだ、煙が出てきて……って、動けないんですけど」

「ああ、みんな縛られてる」

 ザックに教えられて確かめると、自分とザック、まだ目を覚まさないノアの手足にはきつく縄が巻かれていた。

「……待って、エヴァンさんは?」

 まだ力が入りにくい上体をどうにか起こし、辺りを見回すも近くにエヴァンの姿は見当たらない。

「ここにはいないらしい」

 ザックの言葉に、エヴァンの行方を心配しつつも改めて自分がいる場所を見渡す。

「ここは鍾乳洞?」

「そうだな」

 壁面の松明に照らされる柔らかな曲線の岩肌は、地下水によって削られたものだ。

 自分たちを閉じ込めている鉄格子は人工だが。

「で、どうして私たちはここに?」

「わからないが、何か知ってるとしたらあの御者だろ」

 あの場面において小窓から煙玉を入れられるのは御者しかいない。

 ザックの予想に確かにとアーシェリアスが納得したところで、眠っていたノアが身じろいだ。

「う、う~ん……」

「ノア!」

 アーシェリアスが声をかけると、ノアの睫毛が震えてゆっくりと瞼が開いた。
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