破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
「ティコ……てめーはまた空気を読まずに」

「すすっ、すみません~。でも、やっぱり俺に食事係は無理ですよぉ」

「しょーがねーだろ! ダズは高熱で動けねぇんだから」

 どうやらいつもの食事係が病気で、料理に慣れない者が作って失敗したようだ。

 料理で困っているとあって、アーシェリアスはつい声をかけてしまう。

「あ、あの、何を失敗して焦がしたんですか?」

「味付き鹿肉っス」

 素直に答えたティコに、頭領が溜め息を吐いた。

「おいおい、商品となに呑気に料理の話なんてしてんだよ」

「あ、すんません。でも、このままじゃみんなの飯が無くなっちまうんで、別のモンに頼んでくださいっス」

 嘆くティコを見て、アーシェリアスは『これだ』と意を決して「あの!」と手を頭領を見る。

「それなら私が作りましょうか?」

「……お嬢さんが?」

 訝しげな顔でアーシェリアスを見つめ返す頭領。

 アーシェリアスの発言にザックとノアは驚き目を丸くする。

「実は私、料理は得意なんです。どうせ売られるなら、その前に好きなことさせていただけませんか?」

 自らの運命を受け入れつつ願うアーシェリアスを、頭領は見極めるように頭からつま先まで視線を這わせた。

「ふむ……まあ、力もなさそうだし警戒することはねぇか。いいだろう。ティコ、しっかり見張って作らせろ」

「了解っス!」

 アーシェリアスは心の中でガッツポーズをする。

(よしっ! これで少しチャンスはできた! あとはどうにかして情報をゲットしないと。それと、ザックとノアも出してあげれるといいんだけど……)

 それは一度ここを出て、アジトの状況を確認してからが得策だろう。
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