破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 頭領が下っ端の男に指示を出している隙に、ザックが「アーシェ」と声を潜めて呼ぶ。

「ひとりじゃ危険だ」

「ごめん。でも、逃げ出せるチャンスを作れるかもしれない。本についても聞き出せそうならやってみるから」

「相手は卑劣な盗賊だよ? 無理矢理あんなことやそんなことされたらどうするのっ?」

 眉を下げて不安に瞳を揺らすノア。

 アーシェリアスは安心してと言うように明るく微笑んだ。

「私ならほら、ノアのお母さんみたいにボンキュッボンでもない色気なしだし? そんなことにはならないと思うから大丈夫よ」

 心配させないようおどけて言うと、ザックがはぁ……と息を吐いた。

「ボンもキュもなくても女だろ」

「……ほんっとにザックってデリカシーない」

 相変わらずのザックにアーシェリアスが突っかかる。

「自分で言ったんだろ。フォローしたのになぜ責められるんだ」

「ザック、最低。ボク残念だよ」

 ザックがふたりから非難を浴びせられていると、鍵が解錠され、牢の扉が錆びついた音と共に開いた。

「黒髪のお嬢さんだけ出な」

 下っ端の男がアーシェリアスの縄を短剣で切って手足を自由にする。

「おかしな真似をすれば、ここに残るお嬢さんふたりの無事は保証しない。よく覚えておくんだな」

「わ、わかりました」

 牢から出ると、頭領が「こっちだ」と歩き出す。

 アーシェリアスは牢の中のふたりに小さく頷いて見せ、おとなしく頭領について行った。
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