破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 肌寒い洞内は思いの他広い。

(道をちゃんと覚えておかないと)

 ザックとノアを助けられるチャンスが来た時、牢に戻れないと意味がない。

 頭の中で必死に地図を作製しながら歩くこと五分。

 道内に賑やかな声が聞こえ始めた。

 反響する声は、全て男性のもの。

 色気はないと笑い話にしたものの、実のところ胸の内は不安でいっぱいだ。

 だが、弱音を吐いている場合ではない。

(今はこのチャンスを生かすことだけに全集中よ!)

 自らを鼓舞し、先ほどから聞こえていた声が行き交う広い空間に足を踏み入れた。

 ざっと見て十人ほどだろうか。

 灰鷹の団員たちが、使い古された木製のテーブルについて、エールを飲んでいる。

「お頭! そいつは新しい女ですかい?」

「こいつは商品だ。からかうのはいいが、ヘタに傷つけて価値を下げるなよ?」

(からかわれるのもお断りです!)

 お願いだから何もありませんようにと祈っていると、頭領がアーシェリアスを振り返った。

「ここがホールだ。飯食ったり話し合いもする。あのカウンターの奥が厨房だな。あとはティコに聞いて動け」

「わかりました」

「よしお前ら! 飯の前に見周りだ!」

 頭領の指示に従い、団員たちがエールをテーブルに置いてホールから出ていく。

 するとティコが「こっちへ」とアーシェリアスを厨房へと誘った。
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