破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 確かに、鉄製のフライパンには黒く焦げ付いた肉が乗っている。

(外側だけならなんとかなるかも?)

 アーシェリアスは作業台にフライパンを移し、肉をひとつ取り出しては半分に切った。

「中は焦げてないから、まだ使えますね。ティコさん、手伝ってもらっていいですか?」

「もちろんっス!」

「じゃあ、焦げてる部分を全部切り落としてください」

「ウッス!」

 ティコはアーシェリアスの隣に並んで立ち、包丁でテキパキと肉の焦げを削いでいく。

「ティコさん、包丁の使い方すごく上手!」

「ヘヘッ、実は自分、鍛冶師の息子なんスよ」

 はにかんで鼻の下を擦ったティコはどこか誇らしげだ。

「そうなんですね! でも、鍛冶師の息子さんがどうして灰鷹に……ってごめんなさい、出会って間もないのに」

 盗賊になるからには皆それぞれ込み入った事情もある。

 そういう者が大半だというのは、マレーア領主の令嬢であるアーシェリアスも父から耳にしたことがあった。

 盗みを犯し、捕らえられた盗賊には不幸な生い立ちの者も多くいるのだと。

 脱出と、レシピ本について聞き出すことに前のめりになりすぎ、ティコのプライベートな話に立ち入り過ぎたことを反省する。
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