破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 申し訳なさそうに眉を下げたアーシェリアスに、ティコは明るい笑みを見せた。

「別に気にしないっス。というか、別に大した理由じゃないんスよ。ただ、鍛冶師の親父が病気で急死して。店は俺じゃまだ継げるようなレベルじゃないからたたむことになっちっまって」

 削いだ肉を皿の上に落としながら、ティコは自分の身の上話を語る。

「で、仕事探しに村を出たはいいものの、うまくいかずに金が尽きちまって。行く当て無く国境沿いを彷徨ってたところ、お頭に拾ってもらったんス」

「それで灰鷹の一員になったんですね」

「っス。店では金にならない俺の鍛冶の腕も、ここでは仲間の武器を直したりして役に立つこともできるんで充実してるっスよ」

 木箱から野菜を取り出したアーシェリアスに笑みを向けたティコは、ハッとして慌てたように眉を下げた。

「す、すんません! あんたは拉致られて売られる人なのに、盗賊家業に満足してるような話しして」

「アハハ。確かに微妙な心境かも。でも、ティコさんが生きる場所を見つけることができて良かったなって思います」

「あんた……いい人っスね。あの、名前……聞いてもいいっスが?」

 尋ねられて、アーシェリアスはもしもの時、家に迷惑がかからないように「アーシェです」と愛称で答えた。

「アーシェっスね。それでアーシェ。肉の焦げは取れたけど何を作るっスか?」

「野菜たっぷりの鹿肉トマトスープです!」

 そう言って、アーシェリアスは作業台に並べた野菜を手で示す。
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