破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 ジュージューと音を立てながら炒め合わせる野菜がしんなりしてきたところで、ティコが切ったトマトとスープ、ローリエを投入。

「これで一度煮立たせてから弱火にして、柔らかくなるまで煮込むの」

 灰汁を取りながら十五分くらいかなとアーシェリアスが告げると、ティコはふむふむと鍋を覗き込んだ。

「それで完成?」

「ローリエを取って、仕上げに塩コショウしてからね」

 煮込みが完了する間に、アーシェリアスとティコは食器とパンを用意する。

(ティコはレシピ本について知ってるかな……? どうにか話題を盗品に持っていけないかしら)

 思案し、アーシェリアスはパンを食器に乗せながら口を開く。

「ティコはここでは鍛冶の仕事を専門としているの?」

「専門ではないよ。手入れは必要であればするって感じで、普段は備品の管理を任されてるんだ」

 備品の管理には、盗品も入るのではないか。

 アーシェリアスは、情報が得られるように祈りつつティコを見る。

「備品ってどんなもの? 食料の管理も入るの?」

「全部っスね。食料とか日用品とか、あとは戦利品も」

「戦利品?」

「でかい声じゃ言えない、商人や町から盗んだ物を灰鷹では戦利品って呼んでるんだ」

 慎重に。

 疑われないよう自然な口調で。

 緊張に速まる鼓動を宥めるべく、そっと息を吐く。

「盗んだ物はすぐに売るのかと思ってたわ」

「あー、その場合もあるけど、なかなかいい値で売れなくて残ってるものもあるんだ」

「そうなのね」

 では今、残っている物はあるのか。

 あるなら、その中にレシピ本はないか。

 さすがにピンポイントで聞けば怪しまれるため、それ以上はどう聞けばいいのか躊躇ってしまう。
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