破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 どうしたらティコが不自然に思わず聞き出せるか。

 鍋の中のトマトスープをおたまでゆっくりとかき混ぜながら考える。

(ティコなら、レシピ本を探してるって正直に言ってみても大丈夫な気もするけど……)

 万が一スパイじゃないか、なんて警戒されたら即、牢に逆戻りになりかねない。

 ここにあるのか、ないのか。

 それだけでもどうにか知りたい。

 盗品の中にレシピ本があるか自然に聞き出せる理由付けが欲しい。

(何か理由……レシピ本……料理の本……)

 ──と、そこまで考えて閃いた。

(〝料理好きな私〟が使えるじゃない!)

 気付いたアーシェリアスは、おたまを持ったままティコを振り返る。

「あの、売れていない物の中に、お料理関連の本なんてない?」

「料理? ああ、アーシェは料理好きだから読みたいのか?」

 アーシェリアスの質問を、ティコは何の疑いも持たず受け入れた。

(ナイス解釈! いい流れ!)

 ティコの素直さに感謝するとともに、興奮を隠してアーシェリアスは頷く。

「そうなの! あ、もちろんあればでいいんだけど」

 無理強いはしない。

 ないならないで構わないという態度で微笑むアーシェリアス。

 ティコは、木で作ったスタンドケースにスプーンを入れながら「んー」と声にする。

「戦利品は俺の一存で出し入れできないんだ。でも、もしあるなら料理のお礼に持たせてもらえないか頭に相談してみるっス!」

「本当? ありがとう!」

 相好を崩すアーシェリアスに、ティコの頬がほんのりと朱色に染まる。

 これでここに本があるかどうかははっきりするはず。

 心の中で喜ぶアーシェリアスは、逸る気持ちをティコに悟られないよう彼に背を向け、塩とコショウを手に取った。



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