青薔薇の至愛
「朱ちゃん……」
「ん?」
「……しないの?」
いつもと違ってはいても、キス止まり。
朱ちゃんが欲しいのに、なかなか手を出されないことに不安になって聞いてみると、私の唇に触れていた手が頬を掴んでタコみたいに口を突き出させた。
「今日はだーめ」
「んんんん?(どうして?)」
「朝まで止まらなさそうだから」
「……っ」
「ってのは半分冗談で~、この宿壁薄そうじゃん。
客が少ないとはいえ、お前の声誰かに聞かせるの嫌だしな」
「……」
「それに優ママの、電話の時の俺を信頼しきった声を思い出すと……なあ?俺はお前を大事にしたくなるわけですよ」
「……」
「あー、ヤッちまいてぇ」
「いま、感動してたのに……」
ずっと、小さい頃から大切にされている事は知っていたけど、まさか雰囲気に呑まれないなんて……。
やっぱり朱ちゃんは大人だ。
でも、私は少し残念に思っちゃう。
好きだから、欲しいの、朱ちゃんのこと。