青薔薇の至愛




胸を撫で下ろしてホッと一息つくと、朱ちゃんがちょいちょいと手を上下に動かして呼ぶから、何も考えず近づくと。


グイッと手首を引っ張られ、膝の上に乗せられた。



「優ちゃん、いつから誤魔化上手になったの?
 俺の事よりお前の事聞いてんだけど??」


「な、なんのことだろう~」


「すっげぇ嘘下手だな、こんな下手な奴初めて見た。
 愛らしいじゃないの」


「ひゃっ」



朱ちゃんのひんやりとした唇が、私の耳に触れて思わず声がでる。


「言わないとずっと離さないで朝を迎えることになるけど?」と、色気たっぷりの声が耳を刺激するから今夜は眠れそうにない。


……じゃなくて。



「離してくれなきゃ喋れないよ~!」


「喋れてんだろ、ワガママ言うな」


「だってだって、この体勢じゃ話しにくいし、朱ちゃんが近いと……」


意識してそれどころじゃない。


分かってないね、朱ちゃんは。


何度触れられても、慣れないもんなんだよ??


それどころか……鳴りっぱなしの心臓が限界だって、朱ちゃんに聞こえちゃうくらい大きな音を立ててるのに。


本人はいたずらっ子みたいに、分かってて私に触れてくるからタチが悪い。




< 153 / 207 >

この作品をシェア

pagetop