青薔薇の至愛
「えっと……クラスメートの子から聞いたけど、『朝井さん』で合ってるよね?名前」
「はい、朝井優乃です」
「前に迷惑かけちゃったから、これ朝井さんに渡そうと思って」
泉先輩が持っていた小さな茶色い袋を私に差し出す。
「そんな……!気にしなくて大丈夫ですよ!」
「でも元カレとの恥ずかしい喧嘩見せちゃったし……。
それに京堂君の彼女の前で配慮足りなかったよね、ごめんなさい」
申し訳なさそうに震える手で紙袋を持っている泉先輩を見ると、少しだけ罪悪感が生まれる。
あの時、泉先輩大変なのに、朱ちゃんに庇われて嫉妬しちゃった私ってば醜いよね……。
泉先輩、わざわざ後輩の私に会いに来てまで謝ってくれてるわけだし。
ここは素直になろうと、紙袋を受け取ると泉先輩はホッとした表情を見せた。
「あ、ありがとうございます泉先輩。」
「朝井さんの好みが分からなくて、お菓子食べられるか分からないけど……。
あ、あとね」
受け取った紙袋をジッと見つめる泉先輩に、なんだろうと首をかしげると。
「その紙袋の中に京堂君へのお礼の手紙も入ってて……。」
「えっ?!」
「ち、違うの、朝井さん京堂君の彼女だから直接渡すより彼女通した方がいいかなと思って。
口頭でお礼言いたかったんだけど、京堂君人気者だからあまり関わりのない私がクラスまで行って呼び出すと変な噂立ちそうで怖くて……。
だから、あの。渡してもらえると嬉しい……かな」
「……」