青薔薇の至愛
「どうして俺が人様に愛想振りまいてホストの格好なんかしなきゃいけないの?朱光」
「桜木さん性格はともかく、顔はいいからなー。
客寄せにはいいと思うんだよね~」
「俺は性格もいいでしょ?
パーフェクトな男だよ、我が罪。」
「桜木さんが他人に愛想振りまいて接客……?
しかもホストの格好で??……おえ、似合わな」
「相変わらず雪ちゃんは生意気なこと言うよね、縛り上げるよ?」
ニッコリ笑ってベンチから立ち上がる桜木さんに、命が惜しい雪羽君はなにも言わず早足で教室に向かって逃げるけど、ノロノロとその後ろをついていく桜木さんが怖い。
……雪羽君が生きてますように。
「優、本当に気分悪かったら無理するなよ」
日常なのか、一切あのふたりを気にしない朱ちゃんが私の頭に手を置く。
「うん、朱ちゃんいつも気にかけてくれてありがとう。
朱ちゃんも無理しちゃ駄目だよ?」
「えー、なにその顔かわいい~~。
やっぱメイド服着させたくないな、俺以外の前で。」
「私だって嫌だけど……一番嫌がってる雪羽君も着るし、我慢します」
「雪のことなんか気にすることないのに、ほんと優しいよなお前。
そういうとこが好きだわ。」
緩んだ顔で髪が乱れるくらい頭をわしゃわしゃと撫でてくる朱ちゃんに、また胸がチクッと傷んだ。
どうしても渡せない手紙に、モヤモヤが晴れなくて。
それからは結局、タイミングを逃しては泉先輩から手紙を渡されて数日が経っていた。