青薔薇の至愛
「……朱ちゃん」
「んー?」
「浮気しちゃ……駄目だよ?」
そっと、朱ちゃんの腕に触れながら言う。
ため息を吐く朱ちゃんが、ふらふらと電信柱に額をつけて、ブツブツと独り言を呟き始めるから、私達の前を通りすぎていく人達がヒソヒソ話をはじめ怪しんでいた。
「くそ……可愛いな優。朱ちゃんはな、こんな可愛い彼女がいて浮気する暇なんてありません」
「ほんと?ナイスバディな子に目移りしない??」
「しないしない、優ちゃんが一番よ。
お前ぐらいの柔らかさが一番だって。」
「……っ、朱ちゃんどこ見て言ってるの?!」
「そりゃあお前、ムーー…」
「わあああああぁあ!!!!」
慌てて朱ちゃんの口を押さえようと、背伸びをするけど全然届かない。
そんな私を見下ろす朱ちゃんが笑いながら私の肩を抱き寄せて歩き始めるから、どこまでも余裕そうな表情に少しムッとしちゃう。
「お前こそ浮気しちゃ、やーよ?」
「しないよ?ずっと朱ちゃん一筋で生きてきたもん……今さら他の人好きになろうとしても絶対無理だよ」
「ここが外じゃなけりゃあな……ヤッちまってたな~」
「あけちゃん……?」
「はぁー……」
欲を含んだ朱ちゃんのため息を無視して、しばらくするとお家に着いた。
本当はもっと、一緒にいたいけど我慢して家の中に入る。
「おかえり~」とお母さんの声に返事をして、さっさとお風呂に入っちゃおうと自分の部屋に直行すると。
机の上に置いたままの泉先輩の手紙が嫌でも目に入る。