青薔薇の至愛




文化祭、当日。


いつもの何倍も賑やかな学校は、人の多さに萎縮されてしまいそうになるけど、メイド服を揺らしながら何とか苦手な接客を頑張っていた。



「メイドさーん、こっちおいでよ」


「可愛いね、あーんしてくれるサービスとかあるの?」


「猫耳付ければもっと最高なのに」



食事とは関係なしに、からかってくるお客さんもいれば無理難題を言ってくる人もいるから、緊張で返事はカミカミになってしまう。



「お姉さんめちゃくちゃ可愛いじゃん。
 隣おいでよ、売上に貢献するからさ~」



注文を受けていると、ニヤニヤとした金髪集団のひとりがイスに座ったまま私のメイド服に触れようとしてくるから、どうしても崩れてしまう笑顔でかわしていると。



私達の会話を遮る様に、ーーバンッと勢いよくオムライスにかけるケチャップの容器が机に置かれる。



「お客様、セクハラすんなら帰れよ。
 男のパンツでいいなら見せてやるけど?
 ……覚悟があるならどうぞ。」


凍てつく空気を醸し出す雪羽君が、金髪の男を見下しながら言うと
「ひぇ……」と怯えたように体を震わせていた。



「優乃。男客の相手は俺がするから無理しなくていい」


「でも忙しいし、それに雪羽くん……」


「うん?」


さっきから色んなお客さんに呼ばれて、大変そうだから少しでも負担減らしてあげたいよ。



「あのクールビューティーなメイドさん、少しSっぽくていいよね」


「男性ってマジ?」


「あー踏まれたい!!」


みんな雪羽君の冷たい接客態度に構わず言いたい放題だ。





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