青薔薇の至愛
朱ちゃんがひとりしか座れないイスに、「詰めろ」と無言の圧力をかけ、男の人の隣に無理矢理座る。
ピッと胸元のポケットから取り出した小さな四角い紙の角を私にしつこくしていた男の人の頬に当てた。
「どうも、お兄さん。そんなに相手してほしいなら俺がしちゃうよ?
ちなみに俺、ナンバーワンホストだからメイドちゃんより盛り上げ上手よ?これ名刺、いる?」
「はぁ……?いらねーよ。つかなんで俺らが野郎に相手してもらわなきゃならねーんだ」
「可愛い子見てテンション上がるのは分かんなくもないけど、ここ高校の文化祭って分かってる?いかがわしいお店じゃないんだからさー。
絡みたいだけならとっとと帰れよ。」
「はぁ?!なにお前急に現れて好き勝手言ってんの?」
「好き勝手……?そりゃあ言うでしょ。
俺アイツの彼氏だし、守って当然の存在なわけ。
これ以上騒ぐなら、力づくでも閉め出しちゃお」
朱ちゃんがわざとらしく周りに聞こえる様に言うから、ジロジロと他のお客さんも男達を見始める。
その視線に耐えられなくなったのか。
「……っ、くそ萎えたわ!行くぞお前ら」
ばつが悪そうに男が立ち上がると、一緒に席に着いていた友達三人も膝でイスを引いて教室から出ていく。
「はーい、お客様のお帰りで~す」と、朱ちゃんが笑いながら見送ると、教室の中にいる女の子達がそわそわしだして騒ぎ始めるから、ここは本当にメイド喫茶だっけ?と、ホストクラブに様変わりしたように感じちゃう。