青薔薇の至愛
「ただいま」
「ギャーーー!!!!」
ドアが開いた音がまったくと言っていいほど聞こえなくて、お母さんがリビングに踏み込む一歩手前で聞こえてきた挨拶に、朱ちゃんは絶叫しながらソファから転げ落ちた。
「お、お、お母さんおかえりなさい」
「……えっ、なに。なんで朱光こんなところで転がってるわけ?」
「優ママおかえり……いや、アザラシの気持ちになってみようと思って丸くなってみた」
「……あんた、イケメンなのに変よね、もったいない。」
「ゆ、優ママも帰ってきたことだし、それじゃあ俺帰りますんで、さいなら~」
「あっ、朱ちゃん?!」
告白の返事まだなのにーー!!
そう叫びたいけど、お母さんがいるから朱ちゃんを追いかけることができない。
「……もう!お母さんなんでこのタイミングで帰ってきちゃうの!!」
「……?なんで怒ってるかは分からないけど夕食の支度手伝ってね」
「……はーい」
告白の返事が聞けないまま、モヤモヤとした気持ちのまま夜を迎えることになったけど、仕方なくお母さんの後に続いて台所へ向かう。
一方その頃、奇跡的に告白の返事を回避した朱ちゃんは「危な、手だすところだった。まだまだ死ぬんじゃねーぞ、俺の理性」とブツブツ部屋で呟いていた。