その瞳に黙らされる。


あの怪我が部活でできたことも、あの絆創膏は私があげたものだってことも。

みんなは知らなくても私は知っているんだ。



どこか周りよりも少し爽やかな空気を残して彼は私のクラスの教室の前を通っていく。




「美優ー、先生が日誌持って来いって。」

「え、私は先生の便利屋じゃないんだけど。」



先生にパシられた可哀想な私は気後れしながらも職員室まで日誌を届けて、外から昼休みの喧騒が聞こえる廊下を歩いていた。

その時だった。



「わっ。」



突如、選択教室から伸びた手に引っ張られて誘い込まれてしまった。

驚いて引っ張ってきた手を辿ると普段、ここでは合わせない顔があった。



「辻く「しーっ。」



彼は左手で私の手首を掴んだまま、右手の人差し指を私の唇の上にそっとのせた。



「おーい、田所ーってもういないか。」



自然と壁に追いつめられていて、10cmほど先の少し口角があげられどこか妖艶さが漂う表情に思わず息を忘れていると、遠くから先生が私を探す声がした。


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