その瞳に黙らされる。
「辻くん、なんでわざわざ学校で!」
先生がいなくなり、辻くんの指が唇から退けられると私は息をするのと一緒に勢いよく聞いた。
「昨日の絆創膏のお礼わたしにきた。」
彼はシャツの胸ポケットからサイダーの飴のパッケージを取り出した。
「じゃあ、ありがたくいただくけど。」
私が飴に手を伸ばすとそれはひょいとよけられ、思わず辻くんの方を見る。
「くれるんじゃなかったの?」
「美優、さっきさ。俺に見下ろされて見とれてなかった?」
彼はいつもみたいないたずらな顔をする。いや、いつも以上にいたずらっぽい。
「それは辻くんのお顔が素敵すぎるから。」
「本当にそれだけ?」
その言葉に返答がすぐには紡げなかった。
確かに私は彼に至近距離で見下ろされて、その表情にいつも以上にドキッとしてしまった。