その瞳に黙らされる。


「それだけ、だよ。」



辻くんは掴んでいた私の右手を彼の頬の方へ持っていく。私の指先が絆創膏に軽く触れる。

思わず本当に透けてなかった、と思ってしまった。



「そんなに俺の顔が好き?」

「...イケメンは眼福ですから。」

「なんで俺がこんなことしてるかわかる?」



私にそう聞く彼の瞳は見たことないほど熱っぽくて、体の奥の芯のような所が震えた。



「......なんと、なく。」



私がそう言うと彼の綺麗な顔がゆっくり、でも確実に私に近付いてくる。



私は慌てて彼の口元に手を持っていって拒んでしまった。



「だめだった?」

「だ、だって、あなたはこの学校のアイドルなんだから。」



私の言葉に彼の眉が少しいやに歪んだ。



「そうじゃなくて、美優は嫌なの?」



私は嫌だ、と言えなかった。



だって、私はもうあなたに溺れてるんだもの。

私の思いを見透かしたように彼はまたひとつ距離をつめる。


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