転生悪役令嬢のお目付役
扉が大きく開き、あるひとりの男性が私の元に駆け寄り、痛いほどに抱き締める。
「ジュリー。ああ、ジュリー。良かった。目を覚まさなかったら、どうしようかと」
この人は、父であるグラフィス卿だ。
感動的な対面を果たし、本当にこの世界にやってきたんだとの実感をして幸せを噛み締める。
彼はゲーム中の、グラフィス卿そのままだ。
ジュリアンの父は愛娘に甘く、なんでも好きにさせるほどの溺愛ぶり。だからわがままで、自分の気持ちに忠実な悪役令嬢が出来上がる段取り。
「ジュリー。目を覚ましてすぐにすまないのだが、フィリップ王子が面会したいとおっしゃられて」
フィリップ王子……。そうか。今はゲームの序章。ジュリアンが、フィリップ王子と仲を深める時期。
「是非ともお会いしたいですわ」
前のめりで目を輝かせて言うと、父は驚いた顔をする。
「まだ気分が優れないと、突っぱねてもいいのだぞ?」
そうだった。ジュリアンは悪役令嬢。ここはそれらしく振る舞わなければ。
「フィリップ王子がどうしても会いたいとおっしゃられるのでしたら、致し方ありませんわ」
ツンと高飛車に言うと、グラフィス卿は頬を緩める。