転生悪役令嬢のお目付役

 閉じられた扉をぼんやりと見つめる。

 どうなっているんだ。フィリップ王子も、ジュリアン嬢に想いを寄せていた?

 不意に神様との会話を思い出し、跳ねるようにベッドから起き上がる。

 このゲームの世界観を知らずして、お目付役は出来ないだろうとゲームを渡してくれる約束を取り付けていた。それにあの『神様ノート』。

 めぼしい場所を探していると、引き出しのひとつに鍵がかかっていた。しかし鍵穴はなく、丸いボタンがあるだけ。

 押してみても、まるで反応がない。

 まじまじと見つめ、見覚えのあるボタンに思い当たるなにかを感じ、人差し指ではなく親指を当てる。

 音もなく開いた引き出しに、「指紋認証って、現代技術をここに持ってくるのか」と思わずつぶやく。

 感心するような、呆れるような心持ちになりながら、中を確認するとゲーム機と、それからノート。

 まずはこの世界を知ってからだ。と、ゲームを開いた。
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