転生悪役令嬢のお目付役
警護の関係もあるため開催場所は王宮になり、ジュリアン嬢の前に座る。ふたりの間にあるテーブルには、美しいティーセットと、焼き菓子やサンドウィッチが並ぶ。
ジュリアン嬢とだけと言っても、ここの時代設定から、若い未婚の男女が完全にふたりきりになるのは難しい。
召使いや護衛の者たちが、少しばかり距離を置いて控えている。
もちろん彼らは気配を消し、景色と同化させ邪魔はしないのかもしれないが、しっかり耳をそば立てているだろう。
使用人から噂話が駆け回り、ゲームが思わぬ方向に進む場面もあった。
緊張しているのか、顔をこわばらせているジュリアン嬢がありきたりな挨拶を口にする。
「フィリップ王子。この度は、ご機嫌麗しく」
若干震える声はやはり澄んでいて、俺の胸を掴んで離さない。
「ジュリアン嬢も、今日は一段と美しい」
フィリップ王子らしい言葉を口にすれば、ジュリアン嬢は頬を染め、伏せているまつ毛を揺らす。
その仕草が俺の中にある、なにかのスイッチを押した。