転生悪役令嬢のお目付役

 表の顔は上品な王子、そして裏の顔は不遜で強引な、しかしそれが許されてしまう魅惑の王子。

「私は悪役令嬢で……」

 一瞬の沈黙の後、「フッ」と思わず漏らした笑い声を聞く。

「自らそのように言う人物に、初めて出会った」

 唇をなぞった指先は頬に滑らされ、肩を縮める。

「悪役令嬢の片鱗も感じさせないな。少し悪態をついてみてくれないか」

「それは、その」

「どうした? 俺には見せられない?」

 言葉に詰まり、潤んだ瞳を向ける。

 私はジュリアン嬢。フィリップ王子は表の顔しか彼女には見せないはずだ。品のある第一王子としてだけの顔。

 そして、最終局面。
 カトリーナ嬢を守るため、ジュリアン嬢を糾弾するときに見せる冷徹な姿。

 今の彼は、そのどれとも違う。
 まるで、心を許した頃のカトリーナ嬢といる彼みたいだ。

「雷に打たれて、どうかなされたのでは」

 目を丸くしたフィリップ王子は、「そうかもしれないな」そう呟いて添えていた手を外した。
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