転生悪役令嬢のお目付役
 
 盛大なため息を残し、スチュアートは執務室を出て行った。残された部屋で、昨晩を回顧する。

 前に『神様ノート』に質問した内容に、返事があったのだ。

《どうして『悪役令嬢』になりたかったのですか?》に対しての回答だ。

 変わらない美しい文字に、迷いはなかった。

《自分の意見を怯まずに言うジュリアン嬢が、まぶしかったので》

 これには安心した。やはり俺の思い描いていた篠崎さんだと。

 もしもここで《誰かを思う存分、いじめ抜いてみたかった》と書かれたとしたら、それこそ失望しただろう。

 お陰で俺は、今後の自分の方向性を見出せた。

 篠崎さんが自分の意見を言うのなら、なにも悪役令嬢でなくてもいい。彼女はこの世界で、なりたかった自分になればいい。

 俺はお目付役らしく、彼女をサポートするまでだ。

 俺の納得する形で。

 幸い、この世界の俺は権力もなにもかもを持っている。俺は俺で、好きにさせてもらう。

 ゲームは時間が足りず、最後までクリアはできていない。

 それでも主要人物と、その関係性はつかんでいるから大丈夫だろう。

 そもそも、今からシナリオ通りには進ませないつもりなのだから、プレイするだけ無駄というものだ。
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