転生悪役令嬢のお目付役
小さな変化
こちらの世界に来て、幾日か経つ。けれど、思ったようには過ごせていない。
悪態には瞬発力と技術が必要だと、初めて知った。どうやら私は、のんびりした性格だったみたいだ。
私がなにか悪役令嬢らしい発言をしようにも、思いつく前に周りの人々が正解を口にする。今、私が悪役令嬢でいられるのは、今までのジュリアン嬢の行いの賜物だ。
「お嬢様。お口に合いませんでしたか?」
ひどく怯えている侍女に聞かれ、入れてもらったハーブティーの味を改めて味わってみる。
朝によく合う、爽やかな清涼感。
「すみません。ぬるいですよね。火傷されないようにと……ああ、申し訳ございません。出過ぎた真似を」
慌てて紅茶を入れ直しに行く侍女の後ろ姿を、ぼんやりと眺める。なにも言わなくても会話は成立しているらしく、私は悪役令嬢でいられている。
せっかく悪役令嬢にしてもらったのに、ここでも私は自分の意見を言えないでいる。