転生悪役令嬢のお目付役

 小さな頃から、やっぱりぼんやりした性格だったのだと思う。私がなにか困る前に周りの人たちが、世話を焼いてくれた。

 恵まれた環境で、ありがたいと思ってはいる。けれど、自分の意見を言う機会はほとんどなく、それでいいと思っていた。

 ただ少し、心の奥底で寂しさを感じていたのだと思う。ジュリアン嬢の生き生きした姿を見て、うらやましいと感じたから。

 だから願いを叶えてもらえると聞いたとき、一番にジュリアン嬢になりたいと思った。

 紅茶を入れ直しに行った侍女が、「ご主人様が、お客様をお迎えするそうです。お嬢様もご準備を」と、促す。

 昨日はブルーの清楚なドレスを持ってこられ、黙っていると『すみません。お好みではありませんよね』と、別のドレスになってしまった。

 なにかされたとき、黙っているのは気に入らないのだと思われるとやっと気がついた。

 今日はあのブルーのドレスが着たいと、すぐに言わなければ。
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