転生悪役令嬢のお目付役

「乙女ゲームの悪役令嬢に転生してなあ」

 まず、音が頭の中で正確な文字に変換されるのに時間がかかる。『おとめげーむ』って、なんだ? 『悪役令嬢』に、『転生』?

 冗談にもほどがある。

 よほど怪訝な顔をしていたのだろう。「フォッフォッフォッ」と神様は高らかに笑う。

「信じられないのも無理はない。徳を積んできた者は、ここで最後の望みを叶えられる」

「はあ」

『善い行いをした』と、褒められ待ちをしていた俺は、あながち間違っていなかったようだ。

「昔は極楽浄土を望む者が大半だったのじゃが、今はどうしてか不人気で。異世界に行きたいと言う者ばかりでのう」

『異世界』『転生』
 ここ最近、よく聞く言葉だ。

 もしかして急死に一生を得た人物が、生死を彷徨った間に三途の川を見たと言うように、奇跡的に生き返った人があの世の手前で転生した話を、目を覚ましたあとに語っているのか?

 だから、空前の転生物語ブーム? いや、待て。そんなわけあるか。
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