転生悪役令嬢のお目付役

 来客は侍女の言った通り、元カイディン伯爵夫人だった。近くに越してくる予定のため、お近づきにと挨拶にきたと言っていた。

 元カイディン伯爵夫人は、とても快活とした婦人だった。グラフィス卿も楽しそうに過ごしていたのがわかる。

 ジュリアン嬢の母は、ジュリアンがまだ小さい頃に亡くなっている。この点でもジュリアンに感情移入したした原因かもしれない。

 私の場合は、母が離婚して父がいなかったから。だから母に迷惑をかけたくなくて、余計に自分の意見を飲み込む癖がついた。

 自分の立場から言えば、母も再婚してくれれば、気持ちが軽くなるかもしれない。
 ジュリアン嬢の場合はどうなのかな。やっぱり寂しく思うのかな。

「寂しい……ですよね」

 ポツリとつぶやかれた声に、自分の心の声が漏れてしまったのかと目を見張る。

「すみません。また出過ぎた真似を」

 青い顔をする侍女に詰め寄る。

「どうして」

「え?」

 ジュリアン嬢は脇役で、侍女の名前さえ出てこない。この子がジュリアンとどんな関係なのか、侍女以上はなにもわからない。
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