転生悪役令嬢のお目付役

 お陰で猫を目で追いかけたフィリップ王子に、まんまと見つかってしまい、居た堪れない。

 とんでもない空気を作った張本人の猫は、我関せずと私の足元でゴロゴロと喉を鳴らす。

「なんだ、お前。さてはオス猫だな」

 猫に対し文句を言いつつも、楽しそうな様子を見てますます目を見張る。

 フィリップ王子は猫が嫌いのはず。いや、嫌いは語弊がある。王族に育った宿命というべきだ。動植物はおろか、何者にも心を開かない。

 本来の彼ならば、猫がいようと目もくれないだろう。

 そんな中、純真なカトリーナ嬢との出会いが王子の心を溶かしていく。

 私の知っているストーリーは、カトリーナ嬢が猫を撫でている場面に王子が出くわし、恋に落ちる。ここで出会うのはカトリーナであるべきだ。

「猫が懐くのは、ジュリアン嬢が美しいせいか。薔薇をも嫉妬する」

 至極真面目な顔で感心している王子は、もはや私の知っている彼ではない。
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