転生悪役令嬢のお目付役
フィリップ王子side:行動
実験的に動いた行動は、思わぬ結果を招いた。ジュリアン嬢との甘いひと時。
「殿下。隠し通せているとでも、お思いでしょうか。その緩んだ頬を正せないのでしたら、強制的に元に戻して差し上げます」
冷えた視線を送るスチュアートを一瞥し、片手で口元を覆う。
「そう言うな。たまに会えたのだ。少しは浸らせろ」
次の手を思案している間に月日は流れ、ジュリアン嬢とは前回の茶会から会わないまま今日になった。
「結構ですよ。腑抜けになり下がりましたら、王位の座をも引きずり下ろさせていただきますから」
「腑抜けになるものか」
緩んでいた口元を引き締め、低い声を出す。
王子という座は必要不可欠。王子だからこそ、公爵令嬢でもある悪役令嬢ジュリアン嬢のお目付役が出来るというもの。
そう考えると、あながち神様も考えなしではないのかもしれない。
「頼もしい限りです」
温度のない声色でスチュアートは応じる。課せられた指令の重さが堪えているようで、皮肉は日増しにひどくなる。